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法律コラム

2022年11月29日

会社による解雇について

 最近、イーロン・マスク氏がツイッター社を買収したことにより、日本法人のツイッタージャパンでも大規模な人員削減が始まったと報道され話題となっていますが、中には「会社が勝手に従業員を解雇することが許されるのか」と疑問に思う方もいるかと思います。

 もちろん、会社側には会社側の事情があって解雇を行うので、一概に良いとも悪いとも言えませんが、今回はそもそも解雇とは何か、どのような場合に解雇が認められるのか、という点について解説したいと思います。


・そもそも解雇とは?
 解雇とは、「使用者による労働契約の解約」のことをいいます。
 労働契約は、民法第623条において定められた「雇用契約」と同義であり、労働基準法や労働契約法などの労働法は、この雇用契約に関する特別法という位置づけになります。
 また、労働契約には「期間の定めのある雇用契約」と「期間の定めのない雇用契約」の2種類があり、前者は契約期間が満了する前に、使用者が雇用契約を一方的に終了させるとの意思表示が解雇に当たります。
他方で、後者には契約期間の定めがないため、どのタイミングであっても、使用者による雇用期間の終了の意思表示は解雇に該当します。


・解雇の種類
 解雇には大きく分けて2つの種類があります。

 一つが普通解雇とよばれ、世間一般で言われている解雇はこちらを指します。
 多くの会社では、就業規則や社内規則において、解雇事由を定め、これに違反した場合に解雇処分とするとして、普通解雇が行われる場面を事前に想定しているのではないでしょうか。
 普通解雇の場合、労働基準法第20条第1項において、解雇予定日の少なくとも30日前に解雇予告をするか、その30日分の平均賃金(労働者の解雇前3か月分の賃金総額をその期間の総日数で割った金額。実務上「解雇予告手当」と呼ばれています。)を労働者に支払ってからでないと、即時の解雇はできないとされていますので、「明日から来なくていい」等と言って、一方的に労働者を辞めさせることは原則としてできないということになります。

 また、事前の解雇予告や解雇予告手当の支払いをすればどんな場合でも解雇ができるかというとそうではありません。労働契約法第16条には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする。」との規定があり、①解雇に客観的かつ合理的な理由があり、②その解雇が社会通念上相当であると認められない限り、解雇は使用者の権利の濫用として無効となります。

 もう一つは懲戒解雇と呼ばれるものです。
懲戒解雇は、従業員が重大な企業秩序違反行為(横領等の犯罪行為や経歴詐称、度重なる無断欠勤等)をした場合に、使用者が取り得る処分であり、普通解雇に比べ、従業員に対する処罰の意味合いがより大きいといえます。
 また、懲戒解雇は、普通解雇において要求される解雇予告や手当の支払をせずに、即時に解雇の効力を生じさせる極めて重い処分です。また、退職金の全部または一部の支払が受けられないという点も、労働者にとっては非常に厳しい点であるといえます。

 このように、懲戒解雇は労働者にとってデメリットが大きい処分のため、懲戒解雇が有効とされるための要件は極めて厳格に設定されており、懲戒処分に関して定めた就業規則を営業所において周知し、かつ、労働契約法第15条に定められた、懲戒処分の有効性についての基準、及び、前述した同法16条の解雇の有効性についての基準の双方を満たす必要があります。また、昨今の裁判例では懲戒解雇にあたって解雇される労働者の言い分をきちんと聞いたか(聴聞手続といいます。)も大変重視される傾向にあります。

 このように、懲戒解雇はもちろんのこと、普通解雇であっても、使用者が従業員を解雇するためには、いくつもの要件をクリアする必要があり、一度雇用した労働者を解雇することは簡単ではありません。


・整理解雇とは
 冒頭でも述べた会社による人員削減は整理解雇とよばれ、普通解雇の一つとされていますが、解雇の原因が労働者側ではなく使用者側の経営悪化等にあるため、より解雇が認められにくいとされています。今回のイーロン・マスク氏による解雇はこれに当たると思われます。

 すなわち、整理解雇の有効性については、(a)人員削減を行う経営上の必要性、(b)解雇回避努力、(c)被解雇者選定基準の合理性、(d)被解雇者や労働組合との間の十分な協議、という4つの要素から判断するという枠組みが用いられることが実務上一般的で、(東京高裁昭和54年10月29日判決(東洋酸素事件))これらの4要素の全部または少なくとも一部を満たさない限り、解雇権の濫用として無効となります。
特に、(b)解雇回避努力について、会社が希望退職者を募ったり、労働条件を維持しつつ他部署への配置転換を推奨したりすることで、労働者の解雇を回避しようと努力する姿勢を見せない場合、このような努力義務を履行していないとして整理解雇は無効と判断されてしまいます。

 もちろん、過去の判例では、使用者による整理解雇を認めた事例も存在しますが、少なくとも、会社が希望退職者を募ったり、労働条件を維持しつつ他部署への配置転換を推奨したりすることで、労働者の解雇を回避しようと努力する姿勢を見せない場合、整理解雇を実現することは容易ではないといえるでしょう。ですので、イーロン・マスク氏により、仮に整理解雇がなされたとすればクリアすべきハードルが大変高く、アメリカと異なり、易々と日本では解雇は認められないという結論になろうかと思います。


・「退職勧奨」と「解雇」の違い
 退職勧奨とは、会社と従業員との話し合いを通じて従業員自らの意思で退職に応じてもらうための会社による働きかけをいい、従業員の意思にかかわらず会社から一方的に労働契約を終了させる解雇とは別の手続です。

 また、解雇の場合は、上記の通り、労働基準法や労働契約法等による規制があり、その適法性が厳格に判断されることとなります。
 他方で、退職勧奨には、明確な法規制はなく、会社と従業員との間で退職に向けた話し合いは行いますが、実際に退職するかどうかの決定は従業員自身が行います。そして、従業員が退職に応じる場合には、会社と従業員との間で労働契約の終了の合意をすることになります。

 会社としては、解雇が難しいと思われる場合に、何とか従業員に自発的に辞めてもらうため、退職勧奨を行うという事例が散見されます。
 中には、使用者による退職勧奨に対し、従業員が退職するとの意思表示をしていないにもかかわらず、自主退職扱いとして労務提供を拒むというような、実質的な解雇といえる悪質なケースも見受けられます。この場合、会社側が自主退職であると主張することはかなり厳しいと思われますし、民法第536条第2項によって自主退職扱いにされた労働者が会社に行けないのは会社のせいであるとして、賃金の請求が認められてしまう可能性は極めて高いと言えます。


・まとめ
 上記の通り、懲戒解雇・普通解雇はともに容易に認められないものであり、厳格な要件をクリアする必要があります。
 
 とはいえ、当然のことながら、解雇が有効とされた事案は数多く存在し、最近では企業による整理解雇をより緩やかな要件で認めた裁判例もいくつか出てきているところですので、解雇の有効性の判断には専門家による調査や分析が不可欠であるといえます。ですので、従業員の解雇等を考えていらっしゃる法人様は是非、当事務所にご相談ください、
 
 他方で、労働者様からすれば、解雇は労働者の方々の生活の基盤を失いかねない極めて不利益の大きい処分であり、早期に対応しなければ、取り返しのつかないことになりかねません。
会社から解雇処分や退職勧奨を受けお悩みの方は、ぜひ一度当事務所までご連絡ください。

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